それぞれの味

粋人向きの逸品

岩永家では、お嬢さんがトランプを持っていらっしゃるのがきまりでした。それに夢中になっていると、待ち遠しくもないわけです。岩永夫人にかわいがっていただいた私ども。は、たびたびご馳走になったものでした。先日、京都からしゃれた木製の舟形の箱に入った味付きのうなぎが届きました。しっかり煮付けたもので、お茶漬け用に調理したと説明書が入れてありました。熱いご飯の上にのせ、熱いお茶をたっぷりかけて召し上がってくださいというので、めずらしいいただき方だなあと思いました。注意書きによれば、「川で釣ってきたうなぎをただちに調理したもので、十分吟味してはおりますが、釣り針が出てくる場合がありますので、よく注意してください」と書いてあったのには驚きましたが、いかにも「天然うなぎ」だと思うとうれしくなりました。身も締まっていました。蒲焼きのこってりと柔らかく、口に入れると、とろけそうなのもすばらしいけれど、その反対の身が締まった枯淡な味も、また粋人向きの逸品だと思いました。オランダではいろいろなものを賞味する機会があったのですが、昭和三十四年ごろ、KLM(オランダ航空)の仕事で、オランダを一人旅したときのこの方から「うなぎは好きですか」と聞かれ、「大好き」と答えました。